高い柱の上に、町を見下ろすようにして「幸福の王子」と呼ばれる一体の像が立っていた。全身は薄い純金の葉に覆われ、両の目には大粒の青いサファイアが、剣の柄には真っ赤なルビーが、惜しみなくはめ込まれていた。
高高的石柱上,俯瞰著小鎮豎立著一座被人們稱作「快樂王子」的雕像。 雕像通體覆蓋著薄薄的純金葉片,兩眼鑲嵌著兩顆碩大的藍寶石,劍柄上則點綴著一顆鮮紅的紅寶石。
町の人々は誰もがその像を仰ぎ見て、「あの王子のように幸せそうに見えればいいものを」と口々に語り合った。だが、その像が抱えている真実の悲しみについては、誰一人として気づく者はなかったのである。
鎮上的人無不仰望著這座雕像,紛紛感嘆:「但願我們也能像那位王子一樣,看起來這般幸福。 」然而那雕像內心藏著的真正悲傷,世間卻無一人察覺。
生前の王子は、悲しみなど知るよしもないようなふうに、宮殿の中で毎日を笑って暮らしていた。何不自由のない暮らしの中で、城壁の外にどんな世界が広がっているかなど、考えてみたこともなかった。
生前的王子,在宮殿之中天天歡笑度日,彷彿根本不知人間還有「悲傷」這兩個字。 在錦衣玉食的日子裡,他從未想過城牆之外的世界究竟是什麼模樣。
しかし、死後にこの高い場所へ立てられてからは、町の隅々で人々が抱える貧しさや悲しみが、嫌でも目に入るようになってしまった。それ以来、王子の金で覆われた頬には、夜になるとひとりでに涙がこぼれ落ちるようになったのである。
然而,自從死後被立在了這高處之上,小鎮上每一個角落裡貧苦人家的窘迫與悲傷,便不由得映入了他的眼中。 從那以後,每到夜裡,王子那金面頰上便會不由自主地滾落一滴又一滴的淚水。
ある秋の夜のことであった。エジプトへ渡るのが遅れた一羽の小さなツバメが、王子の足元の柱の上で羽根を休めることにした。「ここなら金で屋根が葺かれた寝床に泊まれそうだ」と、一人ご満悦であった。
那是一個秋天的夜晚。 一隻動身去埃及晚了的小燕子,決定借王子腳下的石柱稍作休息。 「這地方屋頂可是用純金葺成的呢。 」他心中頗為得意。
ところが、ツバメがちょうど眠りに就こうかという折に、頭上から大きな冷たい水滴が落ちてきた。「雨が降ってもいないのにおかしいな」と上を見上げると、それは王子の流す涙にほかならなかった。
然而正當他要進入夢鄉之時,一顆巨大冰冷的水滴突然從頭頂滴落下來。 他抬頭一看,分明並未下雨,那滴水竟是王子流下的眼淚。
「あちらの貧しい家では、母親が病気の子どもの看病に疲れ果てている。私の剣の柄のルビーを引き抜いて、あの母親に届けてやってくれないか」と、王子は震える声で頼んだ。
「在那邊那戶窮人家裡,有一位母親為照看生病的孩子而疲憊不堪。 請你將我劍柄上的紅寶石拔下來,送到那位母親那裡去吧。 」王子用顫抖的聲音如此懇求。
ツバメは初め断ろうとしたものの、王子のあまりにも切実な眼差しに負け、結局そのルビーを母親のもとへ運んだ。長旅に疲れていたにもかかわらず、貧しい母子の枕元にそっとルビーを置いてくると、ツバメは温かい気持ちで王子のもとへ帰り着いた。
燕子起初本想拒絕,可被王子那雙殷切到極點的眼神所打動,最終還是把紅寶石送到了那位母親身邊。 儘管旅途勞頓,他仍輕輕地把紅寶石放在了貧苦母子的枕邊,懷著一份溫暖的心情回到了王子身邊。
翌朝、ツバメはいよいよエジプトへ旅立とうとしたが、王子は再び引き留めた。「町の屋根裏で、若く才能ある劇作家が、寒さと飢えのために行き倒れつつあるのだ。今度は私の片目のサファイアを持っていってやってくれないか」と、王子はすがるように頼んだ。
第二天清晨,燕子總算又要啟程飛往埃及,可王子又再次挽留了他。 「在鎮上的閣樓裡,有一位年輕而才華橫溢的劇作家,正因寒冷與飢餓瀕臨死去。 這一次,請你把我一隻眼睛裡的藍寶石帶去給他吧。 」王子如此苦苦哀求。
ツバメは「明日こそは出発する」と何度も自分に言い聞かせつつ、王子の言葉を断ることができなかった。サファイアを腕に抱えるようにして、彼は震える劇作家の机のそばまで飛んでいった。
燕子一遍又一遍地告誡自己「明天一定要出發」,卻怎麼也無法拒絕王子的請求。 他將藍寶石小心地抱在懷裡,一路飛到那位身子打顫的劇作家書桌旁。
さらに次の日、王子は最後のサファイアをマッチ売りの少女に届けるようツバメに頼んだ。「両目を失ってしまったら、もう町を見ることもできないが、それでも構わない」と王子は言いきった。
又過了一天,王子又請燕子把僅剩的最後一顆藍寶石送給一位賣火柴的小女孩。 「我雖然會因此失去雙眼,再也看不到這座小鎮,但那也無所謂。 」王子斬釘截鐵地說。
目の見えなくなった王子を一人残して旅立つわけにはいかず、ツバメは「もう一生あなたのおそばを離れません」と固く決意した。それからというもの、ツバメは毎日町中を飛び回っては、見聞きしてきたことを王子に語って聞かせた。
燕子實在無法把已經失明的王子獨自留在那高處自己飛走,便在心裡暗暗下定決心:「我一生都不離開您。 」從那以後,他每天都飛遍全鎮,將所見所聞一一向王子講述。
「私の身を覆っているこの薄い金箔を一枚ずつはがして、貧しい人々に分けてやってほしい」という王子の言葉に応じ、ツバメは雪の降る町を毎日飛んでは、銀貨と化した金の葉を一枚、また一枚と運び続けた。
在王子「請把我身上這一片片薄薄的金箔一張張剝下來,分給那些貧苦的人們」的請求下,燕子每日穿過飄雪的小鎮,將變成了銀幣的金葉子一片又一片地送到窮人家中。
やがて王子の像はすっかり金を失い、見る影もない灰色のみすぼらしい姿に成り果ててしまった。けれども、金を分け与えられた子どもたちは久しぶりに腹を満たすことができ、貧しい家々には小さな笑顔が戻ってきたのである。
不久之後,王子的雕像便完全失去了那身金裝,化作了一座灰撲撲、不堪入目的破敗雕像。 然而,被分得金箔的孩子們卻久違地填飽了肚子,貧苦的人家裡也終於重新有了一絲絲笑容。
冬が深まるにつれて寒さはますます厳しくなった。それでもツバメは王子のそばを離れず、ある夜とうとう力尽き、「さようなら、愛しい王子様」と一言告げるなり、王子の足元で静かに息を引き取ってしまった。
隨著寒冬一天比一天加劇,氣溫變得越來越嚴酷。 即便如此,燕子也始終沒有離開王子身邊。 一天夜裡,他終於精疲力竭,只來得及說一句「再見了,親愛的王子」,便靜靜地死在了王子的腳下。
その途端、王子の胸の中の鉛の心臓が、大きな音を立てて二つに割れた。それは、ツバメの死を悲しんだあまりのことであったに相違ない。
就在那一剎那,王子胸口裡的那顆鉛心猛然發出一聲巨響,分作了兩半。 這無疑是因為他對燕子之死悲傷至極所致。
春になると、町の市長と議員たちは「あんなみすぼらしい像は、もはや町の体面に関わる」と決め、王子の像を引き倒して炉にかけることに決めた。ところが、不思議なことに、像の胸の中の鉛の心臓だけは、どれほど火にくべても溶けてくれなかった。
春天到來後,鎮長和議員們決定:「這麼破爛的雕像已經有礙鎮上的體面。 」便下令將王子的雕像推倒,扔進了熔爐。 然而不可思議的是,雕像胸口裡的那顆鉛心,無論怎麼用火去燒,都絲毫融化不了。
それは結局、ツバメの亡骸とともに、町外れのゴミ捨て場へぽいと放り投げられてしまった。
那顆鉛心最終連同燕子的遺體,被一併隨手拋到了鎮外的垃圾堆裡。
しかしその時、天国から地上を見下ろしていた神様は、傍らの天使にこう告げた。「あの町から、この世で最も尊いものを二つだけ持ってくるがよい」と。天使は迷うことなく、王子の鉛の心臓と、その足元に倒れたツバメの亡骸を選び取って、神様のもとへ持ち帰ったのであった。
然而就在此刻,自天國俯瞰人間的上帝,對身旁的天使如此說道:「你去那座鎮上,把這世間最珍貴的兩樣東西帶回來吧。 」天使毫不猶豫,選中了王子的那顆鉛心和倒在他腳下的小燕子的遺體,將它們帶到了上帝面前。