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JLPT N1故事

ナイチンゲール夜鶯

宮殿に招かれた森の小鳥が、宝石仕掛けの偽鳥に置き換えられ、最後に皇帝の命を救う物語。宮廷裡被替換成機械裝置的森林夜鶯,最終在皇帝彌留之際回到窗前救回他的故事。

昔、中国に、たいへん立派な磁器の宮殿に住む一人の皇帝がいた。その宮殿は世界でも比べるもののない美しさを誇り、四方には広い庭園が広がり、その奥には深い森と海とがあった。

很久以前,在中國,住著一位皇帝,他的宮殿是用最精美的瓷器建造而成,十分氣派莊嚴。 那座宮殿的美麗世上無與倫比,四面環繞著遼闊的花園,更深處則是深邃的森林與大海。

森の奥には、一羽のナイチンゲールが住んでいた。その鳴き声は聞く者の胸を打ち、海辺で働く漁師たちさえ、夜更けに網を引く手を止めて、その歌に聞き入るほどだった。

森林深處,住著一隻夜鶯。 牠的鳴聲打動每一位聽到的人,連在海邊勞作的漁夫,在夜深拉網之際,也會停下手來聆聽那歌聲。

外国からこの宮殿を訪れた旅人たちは、帰国するとすぐに、口々にその素晴らしさを書物に書き残して伝えた。中でも、彼らが「最も美しかったもの」として記したのは、宮殿の豪華さでもなく、皇帝の権威でもなく、ただ一羽のナイチンゲールの歌だった。

從外國前來訪問這座宮殿的旅人,回國之後,紛紛將所見的美景寫進書中傳揚出去。 而他們記為「最美之物」的,既不是宮殿的華麗,也不是皇帝的威嚴,而是那一隻夜鶯的歌聲。

書物を手に取って読んだ皇帝は、たいそう驚いた。「私の庭の奥に、そのような尊い歌い手がいるとは、これまで知らなかった。すぐにここへ連れてきなさい」と、彼は家来に命じた。

皇帝讀到這些記述,大為震驚。 「在我自家花園深處,竟有如此尊貴的歌手,而我一直不知道。 立刻把牠帶到我面前來」,他向家臣下令。

家来たちは宮中を探し回ったが、ナイチンゲールのことを知る者は一人もいなかった。ようやく、台所で皿を洗っていた一人の少女が、毎晩、家へ帰る道でその歌を聞いていると申し出た。彼女の案内のもと、家来たちはついに森の奥の小鳥に出会えたのだった。

家臣們在宮中四處尋找,可是沒有一個人知道夜鶯。 終於,一位在廚房洗碗的少女說,自己每晚回家的路上都聽過那歌聲。 在她的指引下,家臣們終於在森林深處找到了那隻小鳥。

ナイチンゲールは、皇帝の前へと招かれた。地味な灰色の体だったが、ひとたび歌い始めると、その澄み切った声は宮殿のすべての耳を震わせた。皇帝は深く心を動かされ、目には涙さえ浮かんだ。

夜鶯被帶到了皇帝面前。 牠的羽色雖然只是樸素的灰色,可一旦開始歌唱,那清澈的歌聲便撼動了宮殿裡所有人的耳朵。 皇帝深受感動,眼中竟也湧出了淚水。

「これほどの歌は、聞いたためしがない。褒美に金の首飾りを授けよう」と皇帝は申し出た。しかしナイチンゲールは、「陛下のお目に涙が浮かんだのを見ました、それで私への褒美としては十分でございます」と澄んだ声で丁寧に断った。

「這樣動聽的歌,我從未聽過。 便以一根金項鍊作為賞賜吧」,皇帝這樣提議。 然而夜鶯卻以清澈的聲音謙遜地推辭道:「我已看到陛下眼中泛起的淚水——對我而言,那已經是再夠不過的賞賜了」。

ナイチンゲールはそれから宮殿にとどまり、毎日皇帝のために歌を歌うことになった。鳥籠の中に住まわされ、足には金の鎖がつけられ、見張りの家来が常にそばに控えていた。しかし、その心は次第に、自由な森を恋しがるようになっていった。

從那以後,夜鶯留在宮中,每天為皇帝歌唱。 牠被關在鳥籠裡,腳上繫著金鏈子,看守的家臣一直在旁邊。 然而牠的心,漸漸地開始思念那自由的森林。

ある日、海の向こうの日本の帝から、皇帝への贈り物が届けられた。それは宝石をちりばめた、からくり仕掛けのナイチンゲールだった。ねじを巻けば、たちまち本物そっくりの声で歌い始めるという、目を見張るような工芸品だった。

一天,海外日本的天皇送來一份禮物給皇帝。 那是一隻鑲滿寶石、帶有機械裝置的夜鶯。 只要擰動發條,牠便會立刻以與真鳥一樣的聲音歌唱起來,是一件令人驚嘆的精工之作。

宮中の人々は、新しいからくりのナイチンゲールに夢中になった。本物の鳥と並べて歌わせようとしたが、本物は一節ごとに違う節を歌い、からくりはいつも同じ調べを繰り返した。「同じ歌を何度でも聞ける、からくりのほうがすぐれている」と人々は口々に言いあった。

宮中的人們都被這隻新來的機械夜鶯迷住了。 他們試著讓牠與真鳥同台對唱,然而真鳥每一段都唱出不同的調子,而機械裝置卻始終重複著同一段旋律。 「能反覆聽到同一首歌的,機械夜鶯更勝一籌」,眾人都這麼說。

皇帝もまた、いつしか本物よりも、からくりの歌を好むようになっていった。森のナイチンゲールはやがて誰の目にも留まらないまま、開け放たれた窓から、こっそりと故郷の森へと帰っていった。それを気にする者は、宮中に一人もいなかった。

皇帝也不知不覺間,漸漸比起真鳥,更喜歡機械的歌聲。 森林夜鶯終於在無人注意之下,從一扇敞開的窗子悄悄地飛回了她故鄉的森林。 宮中竟然沒有一個人留意這件事。

一年がたち、二年がたつうちに、からくりのナイチンゲールの中の歯車は、徐々にすり減っていった。ある日、ぜんまいがついに音を立てて壊れ、もう歌うことはなくなってしまった。職人たちは懸命に修理したが、もとのように歌わせることはできなかった。

一年過去,兩年過去,機械夜鶯裡面的齒輪漸漸磨損。 某天,發條終於發出一聲響動,斷了,再也唱不出歌來。 工匠們盡力修理,卻始終無法讓牠再像從前那樣歌唱。

月日が流れ、皇帝は重い病に倒れた。家来たちは新たな皇帝を選ぶための準備を、ひそかに進め始めていた。皇帝はひとり寝床に横たわり、夜ごとに迫ってくる死の足音を聞いていた。

歲月流轉,皇帝病倒不起。 家臣們已經暗中開始為選立新皇帝做準備。 皇帝獨自躺在床上,夜夜聽著越來越近的死亡的腳步聲。

ある夜、皇帝が目を開けると、寝床の上には「死」の影が、皇帝の冠と剣と旗とを手に取って座っていた。その周囲には、皇帝が生涯になした善い行いや悪い行いの数々が、亡霊のように浮かんでは消え、彼を苦しめてやまなかった。

某夜,皇帝睜開眼睛,看見床上坐著「死」的影子,手中已握住了皇帝的王冠、劍與旗。 在他周圍,皇帝一生所做過的好事與壞事,都像亡靈一樣浮起又消散,無休止地折磨著他。

皇帝は、もはやか細い声で「歌を、音楽を聞かせてくれ。これでは耐えられない」と必死に願った。しかし、からくりのナイチンゲールはとっくに壊れていて、ねじを巻く者すらもうそばにいなかった。室内には、ただ皇帝の苦しげな息と、死の沈黙だけが満ちていた。

皇帝用已經細弱的聲音乞求道:「為我奏一首歌、一段樂音吧。 這樣我實在受不了」。 然而機械夜鶯早就壞了很久了,連一位會為牠上發條的人也已經不在身邊。 室內只有皇帝痛苦的呼吸,與死亡的沉默。

その時、開け放たれた窓の外から、聞き覚えのある澄んだ歌声が流れ込んできた。森のナイチンゲールが、人知れず戻ってきたのだった。皇帝の苦しみを察した小鳥は、その身を窓辺にとめて、力を尽くして歌い始めた。

就在那一刻,從敞開的窗外,飄進了一段熟悉而清澈的歌聲。 森林的夜鶯,悄無聲息地回來了。 察覺到皇帝苦痛的小鳥,停在窗邊,竭盡全力地開始歌唱。

その歌声は、玉のような調べで、室内の闇を一筋ずつ照らしていった。死は冠を返し、剣を返し、旗を返し、ついには白い霧のように窓の外へと消え去っていった。亡霊たちもまた、ナイチンゲールの歌に追われるように、跡形もなく消え去った。

那歌聲如玉一般清越,一縷一縷地照亮了室內的黑暗。 死,歸還了王冠,歸還了劍,歸還了旗,最後像一縷白霧一樣飄出了窗外。 亡靈們也彷彿被夜鶯的歌聲驅趕一般,無影無蹤地散去。

命を取り戻した皇帝は、深い感謝の気持ちをこめて、ナイチンゲールに長くそばにいてくれるよう願った。しかし小鳥はこう答えた。「私はやはり森に戻ります。ですが、毎晩、陛下の窓辺へとまいり、世の喜びと悲しみを歌いに来ましょう」と。

重獲生命的皇帝,懷著深深的感激之情,懇求夜鶯永遠留在身旁。 然而小鳥答道:「我還是要回到森林。 但每天晚上,我都會到陛下的窗邊來,為您歌唱世間的喜與悲」。

翌朝、家来たちが皇帝の死を覚悟して寝室の扉を開くと、彼らはそこに、生き返ったかのように朝の光の中で身を起こす皇帝の姿を見た。「諸君、おはよう」と皇帝は静かに告げた。窓の外には、もうナイチンゲールの姿はなかったが、遠い森のほうから、かすかにその歌が漂ってきていた。

第二天早晨,家臣們已做好皇帝離世的心理準備,推開寢室的門,卻看見皇帝在朝陽之中,彷彿復活一般緩緩坐起。 「諸位,早安」,皇帝靜靜地說。 窗外,已經不見夜鶯的蹤影,但從遠方的森林深處,仍有那歌聲的餘韻微微飄來。

— 完 —