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JLPT N2故事

雪女雪女

雪の夜に現れる不思議な女性の物語。雪夜出現的神祕女人的故事。

はるか昔、武蔵の国のとある山里に、茂作と巳之吉という二人の木こりが住んでいた。茂作はもう髪が真っ白に近い老人であったが、弟子の巳之吉はまだ十八の血気盛んな若者であった。

很久很久以前,武藏國一處山村裡,住著兩位名叫茂作與巳之吉的樵夫。 茂作是個頭髮都幾乎全白了的老人,而他的徒弟巳之吉,則還是一個血氣方剛的十八歲青年。

ある冬の日のことであった。二人がいつものように奥山で木を切っていると、午後遅くから空模様が急に怪しくなり、たちまち吹き荒れる猛烈な吹雪に見舞われてしまった。

那是一個冬日裡的事情。 兩人像往常一樣進了深山砍柴,下午晚些時分,天色突然變得詭異起來,轉眼便陷入了一場呼嘯而過的猛烈暴風雪之中。

帰ろうにも、視界はわずか数歩先までしか効かず、道はすっかり雪に埋もれていた。仕方なく、二人は山道の途中にあった渡し守の粗末な小屋に転がり込み、嵐をやり過ごすことにしたのである。

想要回家,可視野不過幾步開外,山道也已被大雪完全掩埋。 無奈之下,兩人只好鑽進山道旁一座渡口看守人的破舊小屋裡,先躲過這場暴風雪再說。

小屋には火の気もなく、外と変わらぬほど冷たかったが、もはやそれ以上のぜいたくは言えなかった。二人は身を寄せ合うようにして横になり、長い一日の疲れに身を任せて深い眠りに落ちていった。

小屋裡沒有任何火氣,裡頭和外面同樣冷得刺骨,可兩人也再沒有多餘的餘地講究什麼了。 他們身子緊緊靠在一起躺下,把一天的疲憊盡數交給睡意,轉瞬便沉入了深深的夢鄉。

夜中、ふと巳之吉は、自分の頬に氷のように冷たい息が吹きかかるのを感じて目を覚ました。半分眠ったままぼんやり目を開けると、すぐそばに、見たこともない白い装束をまとった一人の女の姿があった。

半夜裡,巳之吉忽然感到一陣冰冷如冰雪般的氣息撲在自己的臉頰上,便醒了過來。 他半夢半醒間睜開眼,模模糊糊地看見就在身旁,立著一位身穿前所未見的白衣裝束的女子。

髪は深い黒、肌は雪のように白く、何より目を奪われたのは、その口から漏れる息が音もなく白く凍りついていくさまであった。女は茂作の上にすうっとかがみ込み、長い長い白い息を、まるで霜のように吹きかけていた。

她的頭髮漆黑如墨,肌膚白皙似雪,最令他無法移開視線的,便是她口中吐出的氣息——竟然無聲無息地凝結成了一道道白色的霜氣。 那女子輕輕俯身於茂作之上,正將那道長長的白氣如同寒霜一般,緩緩吹拂在他的臉上。

巳之吉が声を上げる間もなく、茂作は身じろぎひとつしないまま、すでにこと切れていた。

巳之吉連一聲呼喊都來不及發出,茂作便已經一動也不動地嚥下了最後一口氣。

ようやく気づいた女が振り返り、巳之吉と目が合った瞬間、彼の血は全身から引いていくようであった。「お前にも同じようにしてやろうかと思ったものの、見れば、まだ若い体つきをしておる」と、女は静かな声で言った。

終於察覺到巳之吉的女子轉過頭來,與他四目相接的那一剎那,他只覺得全身的血都一併被抽乾了。 「我本想對你也來這一手,」女子用低沉而平靜的聲音說道,「可一看,你的身子骨卻還年輕得很。 」

「ゆえに今宵だけは命を助けてやろう。だが、今夜ここで見たことを、たとえ実の母にであれ、決して他言してはならぬ。もし一言でも口外しようものなら、その時には必ず命をもらいに参るぞ」

「就只今晚一次,我饒你一命。 可今夜在此處所見的一切,哪怕對自己的親生母親,也決不可以走漏半句口風。 若有一句外傳,那時我必定會回來索你的性命。 」

そう冷たく言い残すと、女は戸の隙間から白い吹雪の中へ、煙のようにすうっと姿を消した。気がつくと外はすでに白々と夜が明けかかっており、雪はいつの間にかぴたりとやんでいた。

那女子如此冷冷地留下話來,便如輕煙般順著門縫消失在了門外的白色暴風雪之中。 巳之吉回過神來時,天邊已經泛起了魚肚白,那場暴風雪也不知什麼時候戛然而止了。

茂作の弔いを済ませた巳之吉は、それ以来、その一夜の出来事については誰にも一言も漏らさずに胸の奥にしまい込んだ。月日が流れるにつれて、悲しみも次第に薄れていったのである。

安葬了茂作之後,巳之吉將那一夜的所見所聞深深地藏在心底,對任何人都不曾透露過半個字。 歲月一日日過去,他心中對茂作之死的悲痛,也漸漸淡去了幾分。

あくる年の春先のこと、山道を歩いていた巳之吉は、たまたま同じ方角へ向かう一人の若い旅の娘と道連れになった。彼女はお雪と名乗り、両親を亡くしたばかりで、江戸の親類のもとへ身を寄せる途中であるのだという。

第二年初春,巳之吉走在山道上,偶遇了一位向同一方向趕路的年輕姑娘,與她結伴同行。 她自報名號叫做阿雪,說自己剛剛失去了雙親,正打算投奔住在江戶的親戚。

雪のように白い肌と、すらりとした姿に、巳之吉はたちまち心を奪われた。話を聞けば、お雪のほうも宿のあてが心もとないという。そこで巳之吉は思いきって彼女を自分の家に連れ帰り、そのまま住まわせることにしたのである。

那雪般白皙的肌膚、那纖細修長的身姿——巳之吉轉瞬間便對她動了心。 一交談,才知道阿雪自己其實也沒有什麼穩妥的住處可投。 他於是一咬牙,把姑娘帶回了自己家中,從此便讓她一直住了下來。

お雪は気立てが優しく、家事の腕にかけては並ぶ者がないほど見事であった。やがて二人は所帯を持ち、その後の十数年の間に、お雪は男女合わせて十人もの子をもうけた。不思議なのは、それほどの年月が経っても、彼女が一向に年を取らないことであった。村の人々はみな、「巳之吉は、あれほどの別嬪さんを妻にできて、世にもまれな果報者だ」と口々に羨んだ。

阿雪性情溫柔,料理家務的本事在村裡也算無人能及。 不久後兩人便正式結為夫妻,在那之後十幾年裡,阿雪一共為他生下了十個兒女。 最讓人覺得不可思議的是,無論歲月怎樣流逝,她竟絲毫不見衰老。 村裡的人無不羨慕地說道:「巳之吉竟然娶到了那樣一個絕色美人,真是世上少有的好命人哪。 」

ある冬の晩のことであった。子どもたちがすっかり寝静まった後、巳之吉は囲炉裏のそばで針仕事をしている妻の横顔を、行灯の灯りの中でぼんやりと眺めていた。

那是一個冬日的夜晚。 孩子們都已經早早入睡之後,巳之吉就坐在地爐邊,在行燈昏黃的光暈下,怔怔地凝望著妻子做針線時的側臉。

雪のように白い頬と、髪に映る影とを見るうちに、彼の胸の中には、もう何十年も封じ込めていた一夜の記憶が、不意によみがえってきた。

看著她那雪白的臉頰和映在頭髮上的影子,他心底封存了幾十年的那一夜記憶,竟在一瞬間又湧了上來。

「お前さんのその横顔を見ていると、若い時分に山で出会ったある女のことを思い出すよ。あれは夢だったのか、それとも本当に起きたことだったのか、今となってもよく分からないのだが」と、彼はついうっかり、永年守ってきた約束を破って口にしてしまった。

「看著你這張側臉,我便不由得想起年輕時候在山裡遇到過的那位女子。 那一夜到底是夢,還是確實發生過的事,時至今日我都還說不上來。 」他不知不覺間,便把自己守了幾十年的那個承諾,破口說了出來。

それまでうつむいて針を動かしていたお雪は、すうっと顔を上げ、巳之吉の顔をまっすぐ見据えた。その目はもはやふだんの優しいお雪のものではなく、あの吹雪の夜の冷たい雪女のそれにほかならなかった。

一直低頭做著針線活的阿雪,緩緩抬起頭來,直勾勾地望進了巳之吉的眼睛裡。 她那雙眼,已經不再是從前那個溫柔的阿雪的眼睛,分明就是那個暴風雪之夜中冷得徹骨的雪女的眼睛。

「あの時、確かに『誰にも話すな、話せば命をもらう』と申し渡しましたね。今すぐお前を殺してしまおうかと思う反面、残された子どもたちのことを思うと、それもあまりに不憫でなりません。子どもたちのことだけは、決して粗末になさいますな」と、お雪は震えるような声で言った。

「那一夜,我可是親口對你說過——『此事不許告訴任何人,若說出口,我便取你性命』。 我本想此刻就要了你的命,可一想到留下的那些孩子們,又覺得太過可憐。 只有一件事,孩子們絕不能怠慢,若再讓他們哭上一回,那時你便自己掂量。 」阿雪用顫抖的聲音說道。

最後の言葉を言い終えるか終わらないかのうちに、彼女の体は白い冷気となり、屋根の隙間からすうっと夜の闇へと消えていった。それ以来、お雪の姿を見たという者は、村のどこにも一人として現れなかったという。

她最後那句話還未說完,身子便已化作一縷白色的寒氣,順著屋頂的縫隙徑直消失在了夜色深處。 從那以後,村裡再也沒有人見過阿雪的身影。

— 完 —