今から千数百年も前のこと、北方の異民族が国境を越えてしきりに攻め込んでくるようになった。皇帝は国を守るため、ついに全国の家々に対し、家ごとに男子を一人ずつ差し出すよう徴兵の命を下した。
距今一千多年前的中国,北方异族屡屡越境进犯,气焰甚是嚣张。 为了卫国守土,皇帝终于下令在全国范围内征兵,要求每户人家务必出一个男丁。
一通の召集令状が、辺境のとある村にある木蘭の家にも届いた。家族は皆、その紙を握りしめながら長く黙り込むほかなかった。
一道征兵令也送到了边境一座小村庄里——花木兰的家中。 一家人手捧那张征召令,久久说不出话来。
木蘭の家には、年老いて病がちな父と、年老いた母、そしてまだ年端もいかない弟しかいなかった。「父上を戦場へ送り出すなど、できようはずがない。かといって、皇帝の命に背くわけにもいかない」と、木蘭は幾晩も眠れぬ夜を過ごした。
木兰家中,只有年老多病的父亲、上了年纪的母亲,以及一个尚且年幼的弟弟。 「让父亲上战场,是万万做不到的;可若违抗皇上的旨意,又怎能心安? 」木兰反复思量,连着好几个晚上都辗转难眠。
悩み抜いた末に、木蘭はある重大な決断を下した。驚くべきことに、彼女は男に身をやつし、父に代わって戦場へ赴こうと決意したのである。
在反复挣扎之后,木兰下定了一个重大的决心。 出人意料的是,她竟然决意女扮男装,替父从军,亲自奔赴前线。
「お前がそのようなことを口にするとは思いも寄らなかった。どうか思いとどまっておくれ」と、両親は涙を流して止めにかかった。しかし「たとえこの命を落とそうとも、家族だけは守ってみせる」という木蘭の覚悟は、もはや揺らぐことはなかった。
「想不到你竟然会说出这种话来,求你千万打消这个念头。 」双亲流着眼泪苦苦相劝。 然而木兰的心意已决:「就算为此丢了性命,我也要把家人保护好。 」再也无法动摇。
翌朝、木蘭は市場へ出向き、駿馬と鞍、そして弓と剣を一そろい買い揃えた。長く伸びた髪をばっさりと切り落とし、父の若い頃の鎧を身につけたその姿は、見間違うほどに凛々しい一人の若武者そのものであった。
第二天清晨,木兰来到集市,挑了一匹骏马、一副好鞍,又备齐了弓与剑。 她一咬牙把多年留长的乌发齐齐剪断,穿上父亲年轻时的铠甲,那身姿俨然就是一名英姿飒爽的年轻武将。
父と母にひざまずいて別れを告げると、木蘭はためらうことなく馬に飛び乗り、軍の集結地に向けて故郷の村を後にした。彼女のその行いは、家族への深い愛情と父への孝心にほかならなかった。
木兰跪别父母后,毫不犹豫地翻身上马,朝着部队的集结地,一路驰离了故乡。 她做出这等抉择,正是出于对家人的深切爱意,以及对父亲的拳拳孝心。
戦場での暮らしは、女の身としては想像を絶するほど過酷なものであった。日中は厳しい訓練にしごかれ、夜は凍てつくような寒さの中で野営を強いられた。
战场上的生活,对一个女子而言,是无法想象的艰苦。 白天要承受严苛的操练,夜里则在刺骨的寒风中露宿。
それでも木蘭は決して弱音を吐くことなく、誰よりも早く起き、誰よりも遅く眠った。剣術や馬術にかけては並ぶ者がなく、その腕前はすぐに上官の目に留まるようになった。
即便如此,木兰也从不叫一声苦,起得比谁都早,睡得比谁都晚。 论剑术与马术,她在军中无人能及,那一身本领很快便引起了上司的注意。
戦いは長く続いた。十二年もの歳月の間、彼女は北方の荒野や山岳地帯を転戦し、数え切れぬほどの戦に身を投じた。
战事拖得很长。 整整十二年间,她转战于北方的荒原与高山,投身于数不清的大小战役之中。
出陣のたびに功を立て、味方を救い、敵将を討ち取った。やがて彼女は若い指揮官として軍中に名をとどろかせるようになり、兵士たちは絶大な信頼を寄せるようになった。
每逢出阵,她总能立下战功,救下同袍,斩获敌将。 不久之后,她「年轻悍将」的名字便响彻全军,麾下士兵也对她寄予了绝对的信任。
それほどまでに勇ましく振る舞いながらも、彼女が実は女であることを見抜く者は、ついに一人として現れなかったのである。
然而她虽如此英勇豪迈,军中始终没有一个人看出她其实是一名女子。
長い戦いがついに勝利のうちに終わり、軍は意気揚々と都へ凱旋した。皇帝は木蘭の輝かしい武功を称え、高い官位と数々の褒美を授けようとした。
漫长的战争终于以胜利告终,凯旋之师浩浩荡荡地回到了京城。 皇帝十分赞赏木兰耀眼的战功,要赐予她高位与丰厚的赏赐。
しかし木蘭は皇帝の前にひざまずき、「私には官位など望むところではございません。ただ、一刻も早く故郷へ帰り、年老いた父母にこの顔を見せてやりたいだけにございます」と申し述べた。
然而木兰跪在皇帝面前奏道:「臣不愿受高官厚禄,唯愿尽快回到故乡,让年迈的父母再看一眼这张脸。 」
木蘭のひたむきな孝心に深く心を打たれた皇帝は、無理に引き止めることをせず、代わりに千里を駆けるという駿馬を一頭、はなむけとして贈ってくださった。
木兰一片纯粹的孝心深深打动了皇帝。 皇帝便不再强留她,只赠她一匹据说能日行千里的骏马作为饯行之礼。
故郷へ戻った木蘭は、戸口で待っていた両親と弟に駆け寄って抱き合った。それから自室にこもって長年身にまとっていた鎧を脱ぎ、本来の女性の装いに着替えた。
回到故乡的木兰,扑入了在门口等候多时的父母与弟弟的怀中。 随后她回到自己的房中,脱去多年披挂的铠甲,重新换上了昔日的女儿装束。
ほどなくして、戦友たちが噂を聞きつけて木蘭の家を訪ねてきた。出迎えた美しい娘が、つい先日まで肩を並べて戦った将軍その人だと知った時の彼らの驚きといったら、まさに筆舌に尽くしがたいものであった。
没过几天,从前的战友们听说木兰归乡,便登门拜访。 当他们看到迎出门来的竟是一位美丽的姑娘——而这位姑娘正是前些天还与他们并肩作战的将军本人时,那份惊愕实在是难以言喻。
「十数年も共に戦ってきた我らが将軍が、まさか女性であったとは」と、誰もがしばしの間、自分の耳を疑ったのであった。
「与我们出生入死十几年的将军,居然是个女子! 」众人有好一阵子都不敢相信自己的耳朵。
木蘭の物語は、親思いの孝行と、女としての勇気を兼ね備えた美談として、世代を問わず長く語り継がれていくこととなった。
花木兰这段集孝心与勇气于一身的佳话,从此世代相传,至今为人所颂。