入社五年目になる私にとって、先月の出来事は今でも思い出したくない失敗の一つです。社内では「謝罪は最初の三十分が勝負だ」とよく言われますが、その意味を本当に理解したのは、自分が当事者になってからのことでした。それまでは先輩たちの経験談を聞きながら、頭でわかったつもりになっていたにすぎなかったのです。
きっかけは、取引先に送るはずだった見積書を、別の会社の担当者にうっかり添付してしまったことです。送信ボタンを押した直後に気づき、画面の前で固まってしまいました。その瞬間は、机に突っ伏したいどころではなく、頭の中が真っ白になってしまったというのが正直なところです。
メールには取引先の社名と金額がはっきり記載されており、情報漏洩につながりかねない内容でした。一人で抱え込んだところで解決するはずもなく、私はすぐに席を立ち、課長のところへ向かいました。報告しないうちは何も始まらない、と自分に言い聞かせながら歩きました。
課長は私の話を最後まで聞いたうえで、「まず、誤送信先に電話を入れて削除をお願いしなさい」と冷静に指示してくれました。叱責される覚悟をしていただけに、その落ち着いた対応にはかえって背筋が伸びる思いがしました。さすが管理職だけあって、初動の優先順位を即座に判断できるのだと感心しました。