JLPT N1 · 会話 に戻る
JLPT N1会話

役員会議

企業の構造改革を巡る役員たちの緊迫したやり取り。

社長

それでは、緊急役員会議を始めます。今期の業績悪化は、急激な円高と原材料費の高騰が相まって、かつてない規模の赤字を計上するに至りました。我々は抜本的な構造改革を余儀なくされております。

財務取締役

数字を率直に申し上げます。営業利益はマイナス三百億円、自己資本比率も警戒水準を割り込みました。海外の不採算部門からの撤退を視野に入れなければ、最悪の事態を招きかねません。

営業本部長

撤退はあまりにも性急ではありませんか。長年かけて築き上げた現地ネットワークを、一時の数字で手放すがごとき真似は容認できません。我々の営業力にかかれば、必ずや挽回の余地はあります。

社長

営業本部長のお気持ちは痛いほど分かります。しかし、感傷だけでこの危機を乗り切れる段階はすでに過ぎ去りました。冷静な数値判断なくしては、株主にも従業員にも説明がつきません。

財務取締役

補足いたしますと、欧州拠点は四期連続の赤字、北米拠点も需要回復の兆しが見えません。これ以上の損失補填を続ければ、グループ全体の信用格付けに関わる事態となります。

営業本部長

数字だけで判断を下せば、それまでです。現場が築いてきた信頼や、競合他社が虎視眈々と狙う市場シェア、そうした無形資産をも踏まえて判断していただきたい。

社長

では、折衷案を伺いましょう。完全撤退ではなく、現地企業との合弁化、あるいは持分の段階的譲渡という選択肢はいかがか。

財務取締役

合弁化であれば、初期費用の負担を軽減しつつ、ブランドの継続的露出も保てます。財務的にも検討に値する選択肢かと存じます。

営業本部長

私も合弁化であれば前向きに検討できます。ただし、相手先の選定にあたっては、価格交渉力と販売チャネルを併せ持つ企業に絞っていただきたく存じます。

社長

方向性は見えてきました。ただし、今回の決定は社員の雇用に直結する重大事案です。早期退職優遇制度の拡充、再就職支援、これらも同時に進めねばなりません。

財務取締役

かしこまりました。来週の臨時取締役会までに、財務シミュレーションと人事処遇案を併せてご提示いたします。

社長

よろしく頼みます。本日の議論をもって、我が社は新たな局面に踏み出します。経営陣として、ともに重い責任を背負っていきましょう。

— 完 —