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JLPT N2物語

花木蘭

父のために戦う勇敢な女性の中国の物語。

今から千数百年も前のこと、北方の異民族が国境を越えてしきりに攻め込んでくるようになった。皇帝は国を守るため、ついに全国の家々に対し、家ごとに男子を一人ずつ差し出すよう徴兵の命を下した。

一通の召集令状が、辺境のとある村にある木蘭の家にも届いた。家族は皆、その紙を握りしめながら長く黙り込むほかなかった。

木蘭の家には、年老いて病がちな父と、年老いた母、そしてまだ年端もいかない弟しかいなかった。「父上を戦場へ送り出すなど、できようはずがない。かといって、皇帝の命に背くわけにもいかない」と、木蘭は幾晩も眠れぬ夜を過ごした。

悩み抜いた末に、木蘭はある重大な決断を下した。驚くべきことに、彼女は男に身をやつし、父に代わって戦場へ赴こうと決意したのである。

「お前がそのようなことを口にするとは思いも寄らなかった。どうか思いとどまっておくれ」と、両親は涙を流して止めにかかった。しかし「たとえこの命を落とそうとも、家族だけは守ってみせる」という木蘭の覚悟は、もはや揺らぐことはなかった。

翌朝、木蘭は市場へ出向き、駿馬と鞍、そして弓と剣を一そろい買い揃えた。長く伸びた髪をばっさりと切り落とし、父の若い頃の鎧を身につけたその姿は、見間違うほどに凛々しい一人の若武者そのものであった。

父と母にひざまずいて別れを告げると、木蘭はためらうことなく馬に飛び乗り、軍の集結地に向けて故郷の村を後にした。彼女のその行いは、家族への深い愛情と父への孝心にほかならなかった。

戦場での暮らしは、女の身としては想像を絶するほど過酷なものであった。日中は厳しい訓練にしごかれ、夜は凍てつくような寒さの中で野営を強いられた。

それでも木蘭は決して弱音を吐くことなく、誰よりも早く起き、誰よりも遅く眠った。剣術や馬術にかけては並ぶ者がなく、その腕前はすぐに上官の目に留まるようになった。

戦いは長く続いた。十二年もの歳月の間、彼女は北方の荒野や山岳地帯を転戦し、数え切れぬほどの戦に身を投じた。

出陣のたびに功を立て、味方を救い、敵将を討ち取った。やがて彼女は若い指揮官として軍中に名をとどろかせるようになり、兵士たちは絶大な信頼を寄せるようになった。

それほどまでに勇ましく振る舞いながらも、彼女が実は女であることを見抜く者は、ついに一人として現れなかったのである。

長い戦いがついに勝利のうちに終わり、軍は意気揚々と都へ凱旋した。皇帝は木蘭の輝かしい武功を称え、高い官位と数々の褒美を授けようとした。

しかし木蘭は皇帝の前にひざまずき、「私には官位など望むところではございません。ただ、一刻も早く故郷へ帰り、年老いた父母にこの顔を見せてやりたいだけにございます」と申し述べた。

木蘭のひたむきな孝心に深く心を打たれた皇帝は、無理に引き止めることをせず、代わりに千里を駆けるという駿馬を一頭、はなむけとして贈ってくださった。

故郷へ戻った木蘭は、戸口で待っていた両親と弟に駆け寄って抱き合った。それから自室にこもって長年身にまとっていた鎧を脱ぎ、本来の女性の装いに着替えた。

ほどなくして、戦友たちが噂を聞きつけて木蘭の家を訪ねてきた。出迎えた美しい娘が、つい先日まで肩を並べて戦った将軍その人だと知った時の彼らの驚きといったら、まさに筆舌に尽くしがたいものであった。

「十数年も共に戦ってきた我らが将軍が、まさか女性であったとは」と、誰もがしばしの間、自分の耳を疑ったのであった。

木蘭の物語は、親思いの孝行と、女としての勇気を兼ね備えた美談として、世代を問わず長く語り継がれていくこととなった。

— 完 —