今から千数百年も前のこと、北方の異民族が国境を越えてしきりに攻め込んでくるようになった。皇帝は国を守るため、ついに全国の家々に対し、家ごとに男子を一人ずつ差し出すよう徴兵の命を下した。
一通の召集令状が、辺境のとある村にある木蘭の家にも届いた。家族は皆、その紙を握りしめながら長く黙り込むほかなかった。
木蘭の家には、年老いて病がちな父と、年老いた母、そしてまだ年端もいかない弟しかいなかった。「父上を戦場へ送り出すなど、できようはずがない。かといって、皇帝の命に背くわけにもいかない」と、木蘭は幾晩も眠れぬ夜を過ごした。
悩み抜いた末に、木蘭はある重大な決断を下した。驚くべきことに、彼女は男に身をやつし、父に代わって戦場へ赴こうと決意したのである。
「お前がそのようなことを口にするとは思いも寄らなかった。どうか思いとどまっておくれ」と、両親は涙を流して止めにかかった。しかし「たとえこの命を落とそうとも、家族だけは守ってみせる」という木蘭の覚悟は、もはや揺らぐことはなかった。
翌朝、木蘭は市場へ出向き、駿馬と鞍、そして弓と剣を一そろい買い揃えた。長く伸びた髪をばっさりと切り落とし、父の若い頃の鎧を身につけたその姿は、見間違うほどに凛々しい一人の若武者そのものであった。
父と母にひざまずいて別れを告げると、木蘭はためらうことなく馬に飛び乗り、軍の集結地に向けて故郷の村を後にした。彼女のその行いは、家族への深い愛情と父への孝心にほかならなかった。
戦場での暮らしは、女の身としては想像を絶するほど過酷なものであった。日中は厳しい訓練にしごかれ、夜は凍てつくような寒さの中で野営を強いられた。