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JLPT N5物語

王様の耳はロバの耳

王様の秘密を抱えた床屋が、森の穴に叫ぶ昔話。

昔々、ある小さな国に、優しい王様がいました。王様は毎日、大きくて立派な帽子を被っていました。王様は朝も昼も夜も、その帽子を取りませんでした。だから、国の人は誰も王様の本当の頭を見たことがありませんでした。

王様には、大きな秘密がありました。王様の耳は、ロバの耳と同じだったのです。長くて、毛がたくさん生えていました。王様はその耳がとても恥ずかしくて、いつも帽子の中に隠していました。

しかし、髪は段々長くなりますから、王様は時々髪を切らなければなりませんでした。王様は一人の床屋だけを城に呼びました。「私の耳のことを、誰にも話してはいけない。話したら、大変なことになるよ」と王様は強い声で言いました。床屋は怖くなって、「はい、絶対に話しません」と約束しました。

それから、床屋は毎日苦しくなりました。秘密を持つのは、こんなに重いことだと初めて知りました。家でご飯を食べながら、奥さんに話したくなりました。友達とお酒を飲みながら、叫びたくなりました。でも、王様との約束を守らなければなりません。床屋は段々病気のようになりました。

ある日、床屋は森の中に行きました。誰もいない場所で、大きな穴を掘りました。そして、その穴の中に顔を入れて、「王様の耳はロバの耳!王様の耳はロバの耳!」と何回も叫びました。それから、穴を土で閉めました。床屋は気持ちがとても軽くなって、笑いながら家に帰りました。

次の年の春、その場所に高い葦がたくさん生えました。風が吹くと、葦は「王様の耳はロバの耳、王様の耳はロバの耳」と歌いました。森を歩く人も、近くの村の人も、その歌を聞きました。秘密はすぐに国中に広がりました。

王様はその話を聞いて、最初はとても怒りました。でも、少し考えてから、「隠すより、本当のことを見せる方がいい」と思いました。王様は城の前に出て、初めて帽子を取りました。「みんな、見てください。これが私の本当の耳です」と王様は言いました。

国の人は驚きましたが、王様を笑いませんでした。「正直な王様が大好きです」とみんなは叫びました。床屋ももう苦しくありませんでした。その日から、王様はもう帽子を被らないで、毎日元気に国を歩きました。