むかしむかし、イタリアのある町に、ゼペットという木彫り職人のおじいさんが住んでいました。長年一人暮らしを続けていた彼は、ある日、子どものような木の人形を彫り上げ、ピノキオと名付けました。
「この子が本物の息子になってくれたらなあ」とゼペットがつぶやいたその夜、夢の中で青い髪の妖精が現れました。妖精は「いつかは本当の子になれます。ただし、正直で勇気のある子であればこそ、ですよ」と告げたのです。
翌朝、ゼペットが目を覚ますと、ピノキオはもう自分の足でぴょんぴょんと歩いていました。おじいさんは涙を流して喜び、自分の上着を売って教科書を買い、ピノキオを学校に通わせることにしました。
ところが、学校へ向かう途中、ピノキオはにぎやかな人形劇のテントに引き寄せられ、せっかくの教科書を売ってまで中へ入ってしまいました。家で待っているゼペットのことなど、すっかり頭から消えていたのです。
その帰り道、ずる賢いキツネとネコが現れて、「この畑にお金を埋めれば、明日には木になって何倍にも増えるよ」とうまい話を持ちかけました。ピノキオはその話をすっかり信じ、手持ちのお金を全部奪われてしまいました。
家に戻ったピノキオは、ゼペットに「教科書はどうした」と聞かれ、つい「学校で取られた」と嘘をついてしまいました。すると、嘘をついたとたん、ピノキオの鼻がにょきにょきと伸び始めたのです。
驚いたピノキオは、嘘がばれるのが怖くて家を飛び出しました。「楽しいことばかりの島」というふれこみに誘われて、おもちゃと遊びだけの島へ船で渡ってしまったのです。
その島で毎日のように遊び続けるうちに、ピノキオの耳と尻尾はだんだんロバのように変わっていきました。何も気づかずに遊んでいた仲間たちも、一人ずつ本当のロバになってしまいました。
恐ろしくなって島から逃げ出したピノキオは、海で大きな魚に丸ごと飲み込まれてしまいました。暗く湿った魚の腹の中で、ピノキオは信じられないことに、ゼペットおじいさんと再会したのです。
おじいさんは、ピノキオを探して海に出たまま、同じ魚に飲み込まれていたのでした。ピノキオは、はじめて心の底から後悔し、「ぼくが必ずおじいさんを助けます」と固く誓いました。
夜、魚が口を大きく開けて眠ったすきに、ピノキオは弱ったおじいさんを背負って懸命に泳ぎ、ようやく岸にたどり着きました。家に戻ったピノキオは、薬代を稼ぐために真面目に働き、毎日おじいさんの看病を続けました。
その心がけを見届けた青い髪の妖精は、ある朝、ベッドのそばに現れて言いました。「正直で勇気のあるあなただからこそ、もう人形のままではいられません。」目を覚ましたピノキオは、本物の人間の子どもになっていたということです。