高い柱の上に、町を見下ろすようにして「幸福の王子」と呼ばれる一体の像が立っていた。全身は薄い純金の葉に覆われ、両の目には大粒の青いサファイアが、剣の柄には真っ赤なルビーが、惜しみなくはめ込まれていた。

町の人々は誰もがその像を仰ぎ見て、「あの王子のように幸せそうに見えればいいものを」と口々に語り合った。だが、その像が抱えている真実の悲しみについては、誰一人として気づく者はなかったのである。

生前の王子は、悲しみなど知るよしもないようなふうに、宮殿の中で毎日を笑って暮らしていた。何不自由のない暮らしの中で、城壁の外にどんな世界が広がっているかなど、考えてみたこともなかった。

しかし、死後にこの高い場所へ立てられてからは、町の隅々で人々が抱える貧しさや悲しみが、嫌でも目に入るようになってしまった。それ以来、王子の金で覆われた頬には、夜になるとひとりでに涙がこぼれ落ちるようになったのである。

ある秋の夜のことであった。エジプトへ渡るのが遅れた一羽の小さなツバメが、王子の足元の柱の上で羽根を休めることにした。「ここなら金で屋根が葺かれた寝床に泊まれそうだ」と、一人ご満悦であった。

ところが、ツバメがちょうど眠りに就こうかという折に、頭上から大きな冷たい水滴が落ちてきた。「雨が降ってもいないのにおかしいな」と上を見上げると、それは王子の流す涙にほかならなかった。

「あちらの貧しい家では、母親が病気の子どもの看病に疲れ果てている。私の剣の柄のルビーを引き抜いて、あの母親に届けてやってくれないか」と、王子は震える声で頼んだ。

ツバメは初め断ろうとしたものの、王子のあまりにも切実な眼差しに負け、結局そのルビーを母親のもとへ運んだ。長旅に疲れていたにもかかわらず、貧しい母子の枕元にそっとルビーを置いてくると、ツバメは温かい気持ちで王子のもとへ帰り着いた。