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JLPT N3物語

みにくいアヒルの子

見た目をからかわれた一羽のヒナが、長い冬を越えて美しい白鳥になるお話。

夏のある日、湖のほとりの草むらで、アヒルのお母さんが大切に卵を温めていました。一つまた一つと小さなくちばしが殻を割って、可愛いヒナたちが次々と顔を出していきます。

ところが、最後に残った一番大きな卵だけは、なかなか割れる気配がありませんでした。ようやく割れたかと思うと、中から出てきたのは、体が大きくて灰色の、ほかとはまるで違う見た目のヒナだったのです。

「なんてみにくい子だろう」と、農場の動物たちはその子をからかいました。兄弟たちは仲間に入れず、ニワトリやガチョウまでつついてくる始末で、みにくいアヒルの子は毎日泣いて過ごしました。

つらさに耐えきれなくなって、彼はとうとう家を抜け出しました。湖を渡って沼地までたどり着くと、野生のカモたちに出会いましたが、ここでも「変わった顔だね」と冷たくあしらわれてしまいました。

そのときどこからか、大きな銃声が響き渡りました。猟師たちと猟犬が現れ、みにくいアヒルの子は震えながら草に身を隠して、なんとか難を逃れたのです。

冬になると、寒さと飢えはいっそう厳しくなりました。あるおばあさんに拾われ、しばらくその家で暮らしましたが、家の猫とニワトリに「お前は卵も産めないし、鳴き声もきれいじゃない」とばかにされ、つらくなって出ていきました。

雪の積もる池で、彼はある夕方、遠くから美しい白い鳥たちが空を渡っていくのを見ました。長い首と真っ白な羽。「ぼくもあんなふうになれたらどんなにいいだろう」と心の中でつぶやきました。

しかし冬はますます深まり、池の水は凍り、彼自身も身動きが取れなくなってしまいました。たまたま通りかかった農夫が、凍りかけの体を見つけ、家に連れ帰って暖めてくれました。

ようやく春の訪れとともに、みにくいアヒルの子は再び外の世界へと飛び立ちました。柔らかな日差しの下、花が咲き、緑が広がる景色を見て、生きていることのありがたさを感じました。

ある日、彼は澄みきった湖のほとりにたどり着きました。そこには、いつか空で見たあの美しい白い鳥たちが、優雅に水面を泳いでいました。

「あんなに美しい鳥たちに、ぼくが近づけるわけがない。きっと追い払われてしまう」と彼は思いましたが、それでも勇気を振りしぼって近づきました。すると、鳥たちは怒るどころか、温かく迎え入れてくれたのです。

驚いてふと水面を見下ろすと、そこに映っていたのは、もうみにくいアヒルではありませんでした。長い首と真っ白な羽を持つ、立派な白鳥の姿だったのです。過酷な冬を乗り越えた結果、彼はいつのまにか、ずっと焦がれていた白鳥そのものに育っていたのでした。

— 完 —