はるか昔、武蔵の国のとある山里に、茂作と巳之吉という二人の木こりが住んでいた。茂作はもう髪が真っ白に近い老人であったが、弟子の巳之吉はまだ十八の血気盛んな若者であった。

ある冬の日のことであった。二人がいつものように奥山で木を切っていると、午後遅くから空模様が急に怪しくなり、たちまち吹き荒れる猛烈な吹雪に見舞われてしまった。

帰ろうにも、視界はわずか数歩先までしか効かず、道はすっかり雪に埋もれていた。仕方なく、二人は山道の途中にあった渡し守の粗末な小屋に転がり込み、嵐をやり過ごすことにしたのである。

小屋には火の気もなく、外と変わらぬほど冷たかったが、もはやそれ以上のぜいたくは言えなかった。二人は身を寄せ合うようにして横になり、長い一日の疲れに身を任せて深い眠りに落ちていった。

夜中、ふと巳之吉は、自分の頬に氷のように冷たい息が吹きかかるのを感じて目を覚ました。半分眠ったままぼんやり目を開けると、すぐそばに、見たこともない白い装束をまとった一人の女の姿があった。

髪は深い黒、肌は雪のように白く、何より目を奪われたのは、その口から漏れる息が音もなく白く凍りついていくさまであった。女は茂作の上にすうっとかがみ込み、長い長い白い息を、まるで霜のように吹きかけていた。

巳之吉が声を上げる間もなく、茂作は身じろぎひとつしないまま、すでにこと切れていた。

ようやく気づいた女が振り返り、巳之吉と目が合った瞬間、彼の血は全身から引いていくようであった。「お前にも同じようにしてやろうかと思ったものの、見れば、まだ若い体つきをしておる」と、女は静かな声で言った。