1他人に物を与えること。授受表現の中核で、与え手が話し手側(自分・身内)、受け手が相手側になる方向の動詞。「くれる」が逆方向(相手→自分側)、「もらう」が受け手視点になる。普段の会話ではほぼ仮名で書く。目上には「差し上げる」、ペットや植物にはカジュアルに「やる」を使うことが多い。
この本、もう読み終わったから君にあげるよ。
妹の誕生日に何をあげようか迷っている。
余った野菜は近所の人にあげた。
犬にもおやつをあげていい?
2物や体の一部を上の方へ動かす、または高くすること。物理的に「持ち上げる」の意味で、最も具体的・字義的な用法。「手を上げる」「旗を上げる」のような決まった表現で頻繁に使う。
わかる人は手を上げてください。
毎朝、学校で国旗を上げる。
重そうだったので、片手だけで上げてみせた。
3物をより高い位置や上の場所に移動させる。棚や上の階に何かを置く動作で、「〜の上に上げる」「二階に上げる」のような形で使う。前項の「持ち上げる」が動作そのものなのに対し、こちらは目的地(高い場所)への移動を強調する。
この本、上の棚に上げてくれる?
引っ越しの時、冷蔵庫を二階に上げるのが大変だった。
4値段・品質・地位・水準などを高くする、向上させること。「値段を上げる」「給料を上げる」「品質を上げる」のように抽象的・数値的なものを引き上げる用法。価格について、ごくまれに漢字「騰げる」を使うことがある。
会社は来月から給料を上げると発表した。
原材料費の高騰で、メーカーは商品価格を上げざるを得なくなった。
サービスの質を上げるために、スタッフの研修を充実させた。
5客や訪問者を家・部屋の中に招き入れること。日本の家屋では玄関で靴を脱いで「上がる」(床が一段高くなる)ので、その他動詞として「家に上げる」と言う。少しくだけた言い方で、フォーマルには「家にお招きする」「お通しする」を使う。
雨が降っていたので、客を家に上げて温かいお茶を出した。
知らない人を家に上げるのは不安だ。
6子どもを学校・進学先に入学させること。「中学校に上げる」「大学に上げる」のように、進学段階を一つ上げる意味で使う。やや古めかしい言い方で、現代では「進学させる」「入学させる」のほうが一般的。
息子を来年から私立中学に上げるつもりだ。
下の子もそろそろ小学校に上げる時期だ。
7技能・能力・成績などを伸ばす、向上させること。「腕を上げる」「英語力を上げる」「成績を上げる」のように、自分や他人のスキル・レベルを高める意味で使う。
毎日練習を重ねて、ピアノの腕を上げた。
英会話力を上げるために、毎晩オンラインレッスンを受けている。
次の試験までに必ず成績を上げてみせる。
8成果・利益・業績など、望ましい結果を出す・獲得すること。「成果を上げる」「業績を上げる」「利益を上げる」のように、ビジネスや競技で結果を出す文脈で使う。
彼のチームは今期も大きな利益を上げた。
新人ながら、初年度から目覚ましい成果を上げた。
営業部は今月、過去最高の売上を上げた。
9人をより高い職位・地位に昇進させること。「課長に上げる」のように使うが、現代では「昇進させる」「昇格させる」の方が一般的。
社長は彼女を実力を見込んで部長に上げた。
成績次第で来期から主任に上げることもある。
10仕事や作品を仕上げる、完成させること。「仕事を上げる」「原稿を上げる」のように、ある作業を期日までに完了させる意味で使う。職人・編集・制作現場でよく聞く言い方。
なんとか締め切りまでに原稿を上げた。
今日中にこの仕事を上げてしまいたい。
11声や音を大きく発する。「声を上げる」「悲鳴を上げる」「歓声を上げる」のように、感情や反応を伴って声を発する場面で使う。
子どもたちは花火を見て歓声を上げた。
彼女は突然の物音に悲鳴を上げた。
黙ってないで、おかしいと思うなら声を上げるべきだ。
12視線や顔を上方に向けること。下を向いていた状態から上を向くニュアンスで、「顔を上げる」「目を上げる」のように使う。
顔を上げてしっかり前を見なさい。
彼は本から目を上げて、私の方を見た。
13髪をまとめて上にあげる、アップスタイルにすること。「髪を上げる」のほか、近年は「髪をアップにする」と言うことも多い。
暑くなってきたので、髪を上げて出かけた。
結婚式に出るので、美容院で髪を上げてもらった。
14神や仏に線香・供物・お経などを捧げること。仏壇・お墓・寺社などでの宗教的な行為に使う。「線香を上げる」「お経を上げる」のように使う。
お盆にお墓参りに行って、線香を上げた。
毎朝、仏壇に手を合わせてお経を上げる。
15人を褒めたたえる、お世辞を言って持ち上げること。ただし現代日本語では、単独の「上げる」でこの意味を表すことはまれで、ほとんどは複合動詞「持ち上げる」「ほめ上げる」の形で使われる。単独使用は文語的・古風。
周りがあまりに彼を上げるので、本人も調子に乗ってしまった。
16与えられた金額や予算の中で費用をやりくりして済ませること。「五万円で上げる」「予算内で上げる」のように、コストを抑えて完了させる意味で使う。やや古風で、現代では「〜以内に収める」「〜で済ませる」と言うことが多い。
今度の旅行は三万円で上げるつもりだ。
17学業や授業を終える、修了すること。「授業を上げる」「課程を上げる」のように使う、やや古風な言い方。現代では「授業を終える/終わる」「課程を修了する」が一般的。
では、今日はこれで授業を上げます。
18インターネット上に画像・動画・記事などをアップロード・投稿すること。SNS時代の口語的用法で、「写真をSNSに上げる」「動画をYouTubeに上げる」のように頻繁に使う。「アップする」「投稿する」とほぼ同義。
旅行の写真をInstagramに上げたら、たくさん「いいね」がついた。
新しい動画をYouTubeに上げたので、ぜひ見てください。
勝手に人の写真をネットに上げるのはやめてほしい。
19(口語)気分やテンションを高める、盛り上げること。特にカタカナの「アゲる」で若者言葉的に使われ、「テンションをアゲる」「気分をアゲる」のような表現が定番。対義語の「サゲる」(テンションを下げる)とセットで使われることも多い。
この曲、テンション一気にアゲてくれるよね。
朝から気分をアゲていこう!
20(自動詞・古風)潮や水位が満ちる、上がること。海事・漁業の文脈で使う古い言い方で、現代の一般会話では「潮が満ちる」「潮が上がる」と言うのがふつう。名詞「上げ潮」(満ち潮)にはこの意味が残っている。
潮が上げてきたから、そろそろ船を出そう。
21(自動詞・金融)相場や株価などが上昇すること。証券・市場の業界用語的な使い方で、「株価が上げる」「銘柄が上げる」のように、上がっていく動きそのものを表す。日常では「上がる」を使う方が自然。
好決算を受けて、その銘柄は大きく上げた。
今日の市場は午後から徐々に上げてきた。
22吐く、嘔吐する。ただし現代日本語では単独の「上げる」でこの意味を表すことはほぼなく、複合動詞「吐き上げる」の形でしか使われない。日常では「吐く」「もどす」「ゲロを吐く」(俗)が一般的。
23動詞のて形に付いて「〜してあげる」の形で、自分が誰かのために行為をしてやることを表す補助動詞。授受表現の中核で、行為が自分側から相手側へ向かう方向を示す。普段はかなで書く。 注意:相手にやってあげる「ありがたみ」を強調しすぎると、押しつけがましく聞こえることがあるため、目上には「〜して差し上げる」、または恩恵の表現を避けて単に「お〜する」(謙譲)を使う方が無難。
重そうだね、荷物を持ってあげるよ。
わからないところがあったら、いつでも教えてあげるよ。
妹が泣いていたので、絵本を読んであげた。
犬の散歩、私が連れて行ってあげる。
24(接尾辞)動詞の連用形(ます形語幹)に付いて「〜し終える・完成させる」の意味を加える。「書き上げる」(書き終える)「作り上げる」(作り終える・完成させる)「仕上げる」「やり上げる」のように、最後までやり遂げるニュアンスを強める。
三年かけて、ようやく長編小説を書き上げた。
チーム全員で力を合わせて、新しいシステムを作り上げた。
25(接尾辞・謙譲)謙譲語の動詞のます形語幹に付き、謙譲の度合いをさらに高める。「申し上げる」「お礼申し上げる」「お願い申し上げる」「ご報告申し上げます」のように、書き言葉やビジネスのフォーマルな場面で使う。
この度は誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。