むかしむかし、ある山あいの村に、貧しいけれど心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいました。明日は大みそかだというのに、二人にはお餅を買うお金さえなかったのです。
「お正月にお餅もないのはさびしいですね」とおばあさんが言いました。「それなら、わたしが編み笠をいくつか作るから、町まで売りに行ってきましょう」とおじいさんは答えました。
二人はその夜、いろりのそばで遅くまで笠を編み続けました。仕上がった五つの笠を見ると、おじいさんは少し誇らしげに笑みを浮かべました。次の朝、おじいさんはその笠を肩にかけ、雪の降りしきる中を町へと向かいました。
途中、村のはずれに六体のお地蔵様が並んで立っていました。雪が頭の上に積もって、まるで真っ白な帽子をかぶっているようです。「こんなに寒いと、お地蔵様だってお気の毒だ」と思いながら、おじいさんは町の市場へ急ぎました。
ところが、市場ではどんなに声を上げても、笠を買ってくれる人は一人もいませんでした。日が傾くにつれて寒さもひどくなり、おじいさんはとうとう一つも売れないまま家へ帰るしかありませんでした。