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JLPT N1日常生活

「生きがい」の哲学

人生の目的と充実感を探る日本独自の概念。

「生きがい」とは、日本文化ならではの概念であり、人生を生きるに値するものにする、存在の根幹に関わるものだ。英語に直訳しようにも、その深淵な意味を完全に言い表せる言葉は見当たらない。

この概念が世界的に注目されるに至った背景には、長寿社会における幸福のあり方を模索する動きがある。沖縄の高齢者が元気に暮らす姿が海外メディアで紹介されて以来というもの、「ikigai」は国際的なキーワードとなった。

生きがいとは、必ずしも壮大な目標である必要はない。朝、庭の花に水をやること、孫の笑顔を見ること、趣味の手芸に没頭すること。日々の些細な営みの中にこそ、生きがいは宿るのだと多くの研究者は指摘する。

現代社会においては、仕事に生きがいを求める人が多い。しかし、仕事のみに自己の価値を見出すとなれば、退職後に深刻な喪失感に襲われるきらいがある。定年を境に人生の目的を見失い、心身の健康を損なう例はたためしがない、と断言するには及ばないまでも、決して珍しくはない。

生きがいの本質は、他者との繋がりや社会への貢献と切り離せるものではない。自分なりに誰かの役に立っているという実感こそが、生きる力の源泉なのだ。ボランティア活動や地域の集まりに参加する高齢者が健康を保ちやすいのも、こうした繋がりあっての結果と考えられる。

生きがいを見つけるための唯一の方法などというものは存在しない。大切なのは、日々の生活の中で小さな喜びに目を向け、自分にとって意味ある時間を重ねていくことだ。人生の意味を外に求めるのではなく、自らの内側から湧き上がる充実感を大切にしてこそ、真の生きがいに辿り着けるのではないだろうか。