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JLPT N3物語

孫悟空

石から生まれた猿が天界を騒がせ、お釈迦様に封じられるまでのお話。

むかしむかし、中国の花果山という山の頂に、天と地の気を吸い続けた一つの巨大な石がありました。ある日、その石が突然割れ、中から一匹の不思議な猿が飛び出してきたのです。

並外れた力と知恵を持ったこの猿は、他の猿たちから王として認められ、自ら孫悟空と名乗るようになりました。仲間たちと果物を食べ、滝の裏に隠れた洞窟を住みかにして、自由気ままに暮らしていたのです。

しかし、孫悟空はやがて「どうせ百年経てば、自分も死んでしまう」と気づきました。不老不死の術を学ぶため、はるか遠くにある仙人の山へ、何年もかけてたどり着いたのです。

仙人のもとで、孫悟空はさまざまな魔法を授かりました。なかでも、雲を呼んで瞬時に十万里を飛ぶ筋斗雲と、姿を七十二通りに変える術は、彼の自慢の力となりました。

修行を終えた孫悟空は、海底にある竜王の宮殿へ乗り込み、無理やり巨大な金棒如意棒を借り受けて出てきました。さらに、地獄の閻魔様のもとへ押しかけ、自分の名前を死の帳簿から消してしまったのです。

驚いた天界の神々は、孫悟空を罰するかわりに馬の世話係として雇い、おだてて天界へ呼び寄せました。ところが、自分の役職が低いと知った孫悟空はかっとなり、「斉天大聖」と名乗って、桃源の不老不死の桃を食べ、仙薬まで飲んでしまいました。

天界中の神々が兵を率いて捕らえに来ましたが、如意棒を振るう彼を倒せる者は一人もいませんでした。手のつけようがなくなった神々は、とうとうお釈迦様に助けを求めることになったのです。

お釈迦様は穏やかに微笑み、孫悟空にこう言いました。「お前が私の手のひらから飛び出すことができたら、この天界をお前に譲ろう。」

「そんなのは簡単だ」と孫悟空は筋斗雲に乗り、世界の果てまで一気に飛んで行きました。そこには天を支える五本の柱が立っており、彼は証拠としてその一本に自分の名前を書いて戻ってきたのです。

ところが、お釈迦様が手のひらを開いて見せると、そこには孫悟空の書いた名前がそのまま残っていました。彼が世界の果てだと思っていた五本の柱は、実はお釈迦様の五本の指だったわけです。

お釈迦様は孫悟空を岩山に押し込め、「ここで五百年、心を改めるのだ」と封じてしまいました。山の名は五行山。岩のすき間から日の光だけが差すなか、孫悟空はじっと反省の年月を重ねたのです。

それから五百年後、インドへ経を求める旅の途中、三蔵法師という立派なお坊さんが五行山のそばを通りかかりました。三蔵法師が封印を解いてくれたおかげで、孫悟空はようやく自由を取り戻したのです。

孫悟空はその恩返しとして、三蔵法師の弟子となり、長い長い旅の用心棒を引き受けることになりました。これが、後に語り継がれる『西遊記』の壮大な物語の、ほんの始まりだったのです。

— 完 —