昔々、中国の広大な帝国の宮殿に、美しい声で鳴く一羽のナイチンゲールが住んでいた。その声はあまりに魅惑的であったため、皇帝はその鳥を金のかごに入れ、宮殿の宝として寵愛した。皇帝は毎日そのさえずりに耳を傾け、その美しさに深く心を打たれ、この鳥なくしては生きられないとすら思うほどであった。
ある日、遠くの国から見事な機械仕掛けの小鳥が献上された。それは本物そっくりの声で歌うばかりでなく、全身に宝石が散りばめられており、見た目にもこの上なく豪奢なものであった。皇帝や家臣たちはこの機械の鳥の華やかさに夢中になり、本物のナイチンゲールの存在などすっかり忘れてしまった。本物のナイチンゲールは、誰にも引き止められることなく、静かに森へと帰っていった。
それからというもの、皇帝は来る日も来る日も機械の鳥ばかりを鳴かせていた。しかしある時、機械の鳥は突然「ギギッ」という異音を立てて動かなくなってしまった。内部のぜんまいが壊れてしまったのである。名工を集めても修理することは叶わず、宮殿は深い沈黙に包まれた。そしてその頃を境に、皇帝は重い病に伏せるようになってしまった。
皇帝の死の床に、死神が静かに近づいてきた。かつて犯した罪や過ちが皇帝の枕元を取り囲み、重苦しい空気が部屋を支配した。皇帝が「音楽を、音楽を鳴らしてくれ」と叫んでも、壊れた機械の鳥は沈黙したままである。絶望の淵に立たされた皇帝の耳に聞こえてきたのは、あの懐かしい、森へ帰ったはずのナイチンゲールの美しい歌声であった。
ナイチンゲールの歌声は、窓のすぐ外の枝から響いていた。その清らかな声を聞いているうちに、死神は次第に退き、皇帝は深い眠りにつくことができたのである。翌朝、すっかり元気を取り戻した皇帝に対し、ナイチンゲールは「機械に心はないが、私の歌には命がある」と告げた。皇帝は自らの愚かさを深く恥じ入り、自然の美しさこそが真の宝であると悟ったのである。