日本でアパートを借りるにあたって、契約書をしっかり読むことは何よりも大切です。賃貸借契約書には専門用語が並んでおり、不動産会社の担当者が早口で説明する中、その場の雰囲気に流されて署名してしまう人も少なくありません。しかし内容を十分に理解しないまま判を押せば、後々深刻なトラブルに発展しかねません。
契約書とあわせて必ず受け取るのが、重要事項説明書です。これは宅地建物取引士の資格を持つ担当者が、物件の条件や契約内容を口頭で説明する際の資料で、宅地建物取引業法に基づいて交付が義務付けられています。説明を受けた上で疑問点があれば、その場で遠慮なく質問するべきです。質問しないことには納得して契約を結ぶことなどできません。
まず確認したいのは、初期費用の内訳です。家賃のみならず、敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料、鍵交換費用、保証会社利用料など、契約時に支払う金額は家賃の四、五か月分に及ぶことも珍しくありません。例えば家賃が八万円の物件であれば、初期費用は三十万円を超えることもあります。敷金は退去時に返金される預け金である一方で、礼金は大家への謝礼として支払うものですから、原則として戻ってきません。
次に注意すべきは、契約期間と更新に関する条項です。一般的な普通借家契約では二年契約が多く、更新時に家賃の一か月分程度の更新料を求められる物件も依然として存在します。定期借家契約の場合、契約期間が満了すれば原則として更新されず、住み続けたければ大家との合意のもとで再契約を結ばざるを得ないため、契約の種類を最初に確かめておくことが肝心です。
退去に際しては、解約予告の期限が定められています。通常は退去希望日の一か月前までに書面で通知する必要があり、これを守らなかった場合、家賃一か月分相当の違約金が発生する恐れがあります。さらに、入居から一、二年以内に退去する場合、短期解約違約金として家賃の一、二か月分を請求される契約もあるので、転勤の可能性がある人は特に慎重に読みたいところです。
退去時の原状回復については、トラブルが最も起きやすい部分です。国土交通省のガイドラインに基づけば、日焼けによる壁紙の変色や家具設置による床のへこみなど、通常の使用による損耗は借主の負担にはなりません。にもかかわらず、契約書に「退去時にハウスクリーニング代を借主が負担する」「畳の表替えは借主負担とする」といった特約が書かれていることがあり、これに署名すれば従わざるを得なくなります。入居時の段階で部屋の傷や汚れを写真に撮り、不動産会社と共有しておけば、退去時の余計な請求を防げます。
保証についても、近年は連帯保証人を立てる代わりに、保証会社の利用を必須とする物件が増えています。保証会社を使う場合は、初回に家賃の半月分から一か月分、その後も一年ごとに一万円程度の更新料がかかるのが一般的です。家族に頼れる人がいる場合でも、大家の方針によっては保証会社の利用を避けることができないこともあります。
その他、ペットの飼育、楽器の演奏、同居人の追加、又貸しの禁止など、生活上の細かな制限についても契約書には記載されています。違反が発覚すれば、契約解除を求められるケースもあります。ペットを飼う予定がある人や友人を長期間泊めたい人は、契約前に必ず確認しておくべきです。「相談すればいいだろう」と軽く考えていると、後になって退去を迫られることにもなりかねません。
契約書を読む上で最も大切なのは、わからない箇所をそのまま見過ごさないことです。一度署名してしまえば、後から「知らなかった」では済まされません。面倒に思えても、納得できるまで質問を重ねた上で契約するというのが、安心して新生活を始めるための何よりの近道だと思います。