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JLPT N1故事

走れメロス跑吧梅勒斯

暴君の王に処刑を宣告されたメロスが、友を人質に残し、三日の約束を守るために走り抜く物語。被暴君判處死刑的梅勒斯,留下摯友為人質,為信守三日之約拼命奔跑的故事。

羊飼いのメロスは、激しく怒った。必ず、あの残虐で身勝手な王を除かなければならないと決意した。彼は妹の結婚式の支度を整えるべく、はるばるシラクスの市まで出てきた、まことに素朴な若者だった。

牧人梅勒斯激怒了。 他下定決心,必須除掉那個邪惡殘暴的王。 他原本只是一名樸素的青年,遠道來到錫拉庫扎市,為的是替妹妹籌備結婚的事宜。

メロスは市を歩き回り、買い物を済ませようとした。しかし、夜の都の様子は、二年前に来た時とはまるで違っていた。家々の戸は固く閉ざされ、人々の顔には何かおびえたような色が浮かんでいた。

梅勒斯在市內四處走動,想把買的東西辦妥。 然而,夜色中都城的樣子,與兩年前他來過時截然不同。 家家戶戶大門緊閉,行人面上彷彿帶著某種膽怯之色。

メロスはひとりの老人をつかまえて、その理由を尋ねた。老人は声をひそめて告げた。「王様は、人を殺すのでございます。ご自身の妃も、王子も、それから親類や家臣に至るまで、信頼に値する者は誰一人いないと、片端から処刑しておられるのです」と。

梅勒斯拉住一位老人,問他箇中緣故。 老人壓低聲音告訴他:「陛下在殺人。 連自己的王妃、王子,乃至親族、家臣,凡是他認為不值得信賴的,都被一一處決了」。

メロスはこれを聞いて、激しい怒りに身を震わせた。「そのような王を、生かしてはおけない」と、彼はその場で剣を手にし、まっすぐ王城へと向かった。市の人々は、彼の振る舞いを止めるすべもなく、ただ呆然と見送るばかりだった。

聽了這番話,梅勒斯怒不可遏。 他當場握劍在手,直奔王城而去,口中說道:「如此暴君,斷不能讓他活著」。 市民們無力阻止他,只能茫然送他離去。

王城に踏み入ったメロスは、ただちに衛兵に捕らえられた。王ディオニスの前に引き出された彼は、いささかも恐れることなく、王の暴政を激しく非難した。「人を信じることを忘れた者には、もはや王である資格はない」と、彼は鋭く言い放った。

闖入王城的梅勒斯立刻被衛兵抓住。 他被帶到狄奧尼斯王面前,毫無懼色地猛烈譴責王的暴政。 「忘記信賴他人的人,已經沒有當王的資格了」,他凜然說道。

ディオニス王は、青ざめた顔で薄笑いを浮かべながら答えた。「人の心とは、いつわりばかりだ。信じるなど、愚か者のすることだ」と。そして、彼はメロスを翌日処刑することに決めた。

狄奧尼斯王臉色蒼白,唇邊浮起一絲薄笑,答道:「人心都是虛偽的。 所謂相信,不過是愚者所做的事」。 他當場決定第二天處決梅勒斯。

メロスは静かに、しかし毅然として、王に願い出た。「妹がおります。三日後に式を挙げる予定でしたので、どうか三日だけ命をのばしていただきたい。式を済ませた後、必ずここに戻ってまいります」と。

梅勒斯靜靜地、卻毅然地請求王說:「我有一個妹妹。 她原本預定三日後舉行婚禮。 懇請陛下寬限我三日的性命,辦完婚禮之後,我一定會回到此處」。

王は嘲笑い、「逃げる気だろう、人など信じられるものか」と切り捨てた。しかしメロスは退かず、「身代わりに友のセリヌンティウスを人質として残します。友が裏切ったならば友を殺せばよい、私は必ず戻る」と誓った。

王嘲笑道:「分明是要逃跑,人哪裡值得信任」。 梅勒斯卻不退縮,發誓道:「我把摯友塞利努提烏斯留下來作為人質。 如果我背叛,殺了他便是。 我一定會回來」。

王はその提案を受け入れた。これでメロスも逃げ、人と人との信頼など空しい幻にすぎないことを証明できると、ひそかに確信したのである。セリヌンティウスは、何も言わずに深くうなずいて、人質となることを引き受けた。

王便接受了這一提議。 他暗自確信,憑此可證明梅勒斯也終將逃亡,所謂人與人之間的信賴,不過是一場空洞的幻象。 塞利努提烏斯什麼也不說,只深深點了點頭,答應做這人質。

メロスは夜を徹して走り、村に戻った。妹に事情を告げ、急いで式の支度を進めた。妹もまた、兄の覚悟を察し、涙をこらえて式の支度に取りかかった。

梅勒斯徹夜奔走,回到村中。 向妹妹告知事情原委,急忙加緊籌備婚禮。 妹妹也感受到了兄長的決心,強忍著淚水投入到操辦之中。

翌朝、雨もよいの中、式は無事に執り行われた。村人たちはメロスの帰還を喜び、彼を引き止めようと躍起になった。しかし、メロスは友のために、再び旅立たなければならなかった。

翌日清晨,在欲雨的天色之下,婚禮順利完成。 村人為梅勒斯的歸來歡喜不已,竭力要將他留下。 然而梅勒斯為了摯友,必須再次啟程。

妹に別れを告げたメロスは、シラクスへの帰路についた。途中、激しい豪雨に見舞われ、橋は流され、川は荒れ狂って、もはや渡るすべもないかと見えた。しかし彼はためらうことなく、激流に身を投じ、流されながらも対岸へとたどり着いた。

與妹妹道別後,梅勒斯踏上了返回錫拉庫扎的路途。 途中遭遇驟雨,橋被沖走,河水狂湧奔騰,看似再無渡河之法。 然而他毫不遲疑地縱身躍入急流,任由水流沖刷,硬是抵達了對岸。

山道に差しかかると、待ち伏せていた山賊どもが、彼の前に立ちふさがった。「命が惜しければ、その身につけたものをすべて置いていけ」と、賊どもは口々に叫んだ。

行至山道,埋伏已久的山賊們擋住了他的去路。 「若惜命,就把身上所有的東西留下」,賊徒們群起呼號。

「俺はただ、友を救うために走っている。お前たちに渡す金など持ち合わせていない」とメロスは言い放つとすぐに、剣を抜き、襲いかかる賊どもをなぎ倒した。三人を退けたところで、残りの賊は恐れをなして逃げ散った。

梅勒斯立即應道:「我只是為了救摯友而奔跑,身上沒有什麼錢財能給你們」。 話音剛落,他便拔劍,一一擊倒撲來的山賊。 打退了三人之後,剩下的賊人便害怕得四散逃走了。

しかし、夏の太陽は容赦なく照りつけ、メロスの力はみるみる失われていった。喉は渇き、四肢は鉛のように重く、ついに彼は道端の草むらに倒れ込んだ。「もう、間に合わないのではないか」という暗い思いが、心の底にかすかに芽生え始めた。

然而夏日的烈日絲毫不留情,梅勒斯的力氣眼看著耗盡。 喉中乾渴,四肢沉如灌鉛,他終於撲倒在路旁的草叢之中。 「莫非……已經趕不上了」——一縷陰暗的念頭,在心底悄然萌生。

「俺は走り続けて、友を救おうとした。だが、これほどまでに尽くしても、なお間に合わないのなら、それは天の定めにほかならない」と、彼は弱々しくつぶやき、一瞬すべてを諦めかけた。

「我一路奔跑,想要救出摯友。 可是即便我已經盡力到這種地步,仍然趕不上的話,那也只能說是天意,再沒有別的辦法」,他虛弱地低聲呢喃,一瞬間幾乎要徹底放棄一切。

その時、近くの草陰から、清らかな泉のせせらぐ音が聞こえてきた。メロスは這うようにしてその泉に近づき、両手でひとすくいの水を飲んだ。すると、不思議なことに、彼の中に再び力がよみがえり、立ち上がる気力が湧き上がってきた。

就在此時,附近草叢之中傳來了清澈的泉水潺潺之聲。 梅勒斯爬行般地靠近那處泉水,雙手捧起一掬水飲下。 奇異的是,他的身體裡再次湧出了力量,重新站起的勇氣也升騰而起。

「もう一度、走ろう。たとえ間に合わなくても、友のもとに、この身を捧げよう」とメロスは決意し、再び全力で駆け出した。日が沈み始めた頃、彼は遠くにシラクスの城門を望むに至った。

「再跑一次吧。 即便趕不上,也要把這副身軀獻到摯友身邊」,梅勒斯下定決心,再次全力疾奔。 夕陽開始下沉時,他終於在遠方望見了錫拉庫扎的城門。

城門に駆け込んだメロスは、まさに刑場で吊り上げられようとするセリヌンティウスを目にした。「待ってくれ、間に合った」と叫び、群衆の中をかき分けて、友のもとへとたどり着いた。

衝進城門的梅勒斯,正看見塞利努提烏斯將被吊上刑場。 「等一下,趕上了」,他大喊一聲,奮力撥開人群,奔到摯友身旁。

二人の友は、抱き合って涙を流した。ディオニス王はこれを目の当たりにして、しばし呆然と立ち尽くしていたが、やがて二人の前にひざをつき、「どうか、私も君たちの仲間に加えてはくれないか」と頼んだのである。一人の少女が、ぼろぼろになったメロスに、一枚の赤いマントを差し出した。

兩位摯友相擁而泣。 狄奧尼斯王目睹這一幕,呆立良久,終於在二人面前跪下,聲音顫抖地懇求道:「請允許我也加入到你們二位的友誼之中」。 一位少女見梅勒斯衣衫襤褸,走上前來遞給他一襲紅色的斗篷。

— 完 —