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JLPT N3物語

ヘンゼルとグレーテル

森に捨てられた兄妹がお菓子の家の魔女に立ち向かうお話。

深い森のすぐそばに、貧しい木こりの家族が住んでいました。父と継母、それにヘンゼルとグレーテルという幼い兄妹の、四人暮らしでした。

ある年、ひどい飢えで食べ物がほとんどなくなってしまいました。「これでは大人だって生きていけない。子どもたちを森の奥へ置いてくるしかありません」と継母は父親に言いました。父親は反対しましたが、最後にはしぶしぶ承知してしまったのです。

戸口で話を聞いていたヘンゼルは、夜にこっそり外へ出て、月明かりに光る白い小石をポケットいっぱいに集めました。「これさえあれば、きっと家まで戻れるよ」と妹をなぐさめました。

次の日、家族は森の奥へと入って行きました。ヘンゼルは歩きながら、小石を一つずつそっと道に落としていきました。両親が二人を置いて去ったあとも、月の光に照らされた小石をたどって、兄妹は無事に家に帰り着いたのです。

しかし、しばらくするとまた食べ物がなくなり、継母は二度目の置き去りを言い出しました。今度はヘンゼルが小石を集めるひまもなく、パンのかけらしか持って出られませんでした。

森でパンを落としていきましたが、お腹を空かせた鳥たちがすぐに食べてしまったせいで、帰り道はすっかり消えてしまいました。二人は道に迷い、何日もさまよい歩きました。

ふらふらに疲れたころ、目の前に不思議な家が現れました。屋根はチョコレート、壁はビスケット、窓はあめ玉でできています。お腹の空いていた兄妹は、夢中で壁をかじり始めました。

「まあまあ、お腹がすいているのね。中に入って、もっとおいしいものを食べなさい」と、優しそうなおばあさんが出てきました。あたたかい料理とふかふかのベッドに、二人はすっかり気を許してしまいました。

ところが、そのおばあさんの正体は、子どもを太らせて食べる恐ろしい魔女だったのです。次の朝、魔女はヘンゼルを檻に閉じ込め、グレーテルには掃除や料理を奴隷のようにさせました。

毎朝、魔女はヘンゼルに「指を出してごらん」と命じ、太り具合を確かめようとしました。目のあまり見えない魔女に対して、ヘンゼルは細い鳥の骨を差し出し、まだ痩せているふりをして時間を稼ぎ続けたのです。

しびれを切らした魔女は、ついに「もう待っていられない。今日こそ食べてやる」と言って、かまどに火を入れました。「中の様子を見ておくれ」とグレーテルに命じましたが、グレーテルはわざと「やり方が分かりません」と言いました。

魔女が腹を立てて自分でかまどを覗き込んだとたん、グレーテルは思い切り背中を押して、戸をしっかり閉めました。これで魔女はもう二度と子どもを食べることができなくなったわけです。

グレーテルは急いでヘンゼルの檻を開けました。家中の宝石をポケットに詰めて、二人は森を抜け、ようやく父親の待つ家へ帰り着きました。継母はすでに亡くなっており、父子と兄妹は宝のおかげで二度と飢えに苦しむことなく、仲良く暮らしたということです。

— 完 —