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JLPT N2物語

竹取物語

最古の物語とされる、かぐや姫の完全版。

今は昔、竹取の翁と呼ばれる老人がいた。彼は毎日のように野山に分け入って竹を切り取り、生活に必要なさまざまな道具にこしらえては、町でそれを売って細々と暮らしを立てていた。

ある日のこと、いつものように竹林に踏み入った翁は、奥のほうで一本だけ根元がぼうっと光り輝いている竹を見つけた。不思議に思って近寄ってみると、なんとその竹の筒の中では、小さな手のひらほどの女の子が、ちょこんと座っているではないか。

「これはきっと天が私のもとへ授けてくれた子に相違ない」と翁は思い、その子をそっと両手に抱えて家へと連れて帰った。子のなかった老夫婦にとって、この出会いはまさに長年の願いがかなった奇跡にほかならなかった。

その日を境に、翁が竹を取りに行くたびに、黄金がぎっしりと詰まった節を持つ竹を立て続けに見つけるようになった。家はみるみるうちに豊かになり、もはや細々とした暮らしは過去のものとなったのである。

不思議なことに、その娘はわずか三ヶ月のうちに一人前の女性へと成長を遂げ、世にも稀なほどの美しさを備えていた。やがて村の長老たちが集まり、彼女に「かぐや姫」という名を授けた。

かぐや姫の美しさといったら、見た者は誰一人として目を奪われずにはいられないほどであった。その噂はあっという間に都にまで届き、身分の高い貴公子たちまでもが、競って彼女に結婚を申し込みに来るようになった。

中でも特に熱心だったのは、五人の高貴な公達であった。彼らは何としてもかぐや姫を妻にしようと、毎日のように翁の家の前に押しかけ、頭を下げ続けた。

困り果てたかぐや姫は、一計を案じ、五人それぞれに別々の難題を出すことにした。仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、龍の首の珠、燕の子安貝——およそ普通の人間の力では手に入れようがないものばかりであった。

五人の公達は意気込んで宝を探しに出かけたものの、ある者は偽物にだまされ、ある者は嵐に遭って命を落としかけ、結局、誰一人として本物を持ち帰ることはできなかった。

かぐや姫の評判を伝え聞いた帝もまた、彼女の美しさを一目見ようと、自らお忍びで翁の家を訪ねるほどであった。しかし姫は、帝の前でさえ姿を消そうとし、決して首を縦に振ることはなかった。

それでも帝は諦めず、かぐや姫のもとに繰り返し歌を贈り続け、姫もまた礼儀正しく歌を返した。二人の間には、結ばれることのない不思議な情のような絆が、しずかに育っていったのであった。

やがて秋が深まり、夜空に満月がひときわ美しく輝く頃になると、かぐや姫は毎夜縁側に座っては月を見上げて、深いため息をつくようになった。心配した翁が幾度も理由を尋ねた末に、姫はついに重い口を開いた。

「実は、私はもともとこの国の人間ではなく、月の都の住人なのです。次の満月の夜には、迎えの者が降りてきて、私を月へと連れ帰ることになっているのです」と、彼女は涙ながらに打ち明けた。

翁とその妻は、わが子を奪われるかのような深い悲しみに沈んだ。話を聞いて驚いた帝は、何としてもかぐや姫を守り抜こうと、数千人の屈強な兵士を翁の家の周囲にぐるりと配備した。

いよいよ運命の満月の夜が訪れた。月の中ほどから、目もくらむほどのまばゆい光がさしてきたかと思うと、その光の中から、雲に乗った天人の一行がしずしずと地上へと降りてきた。

兵士たちは矢を放とうとしたが、その光に目がくらみ、手も足も思うようには動かなかった。とても戦うどころではなく、ただ立ち尽くすほかなかったのである。

天人の長は厳かに告げた。「かぐや姫は罪あって地上に下されたが、その時もすでに満ちた。もはや一刻も留まることはできぬ」と。

かぐや姫は涙にむせびながら、翁と妻に深々と頭を下げ、これまで育ててくれた恩を心からの言葉で謝した。そして、別れの記念にと、帝への手紙と不死の薬を残し、天の羽衣をまとった。

羽衣を肩に羽織った瞬間、かぐや姫の心からは地上の記憶も愛着もすうっと消え去り、振り返ることもなく月の都へと昇っていったのである。

残された翁夫婦は、悲しみのあまり食事も喉を通らず、なすすべもなくただ泣き暮れるほかなかった。後に帝は、不死の薬を「姫のいない世で長生きしても何になろうか」と嘆き、駿河の国の山頂で焼かせたという。その煙が今も絶えず立ち上り続けているのが、富士の山だと語り伝えられている。

— 完 —

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