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JLPT N3物語

浦島太郎

亀を助けた漁師が竜宮城で過ごし、地上に戻ると数百年が経っていたお話。

むかしむかし、ある海辺の小さな村に、浦島太郎という心優しい若い漁師が住んでいました。年老いた母と二人暮らしで、毎日海に出て魚を取り、村の人々からも好かれていたのです。

ある日の昼下がり、太郎が浜辺を歩いていると、子どもたちが集まって何かを棒でつついていました。近づいてみると、小さな亀が砂の上でひっくり返り、苦しそうにもがいていたのです。

「そんなことをしてはいけない。亀がかわいそうじゃないか」と太郎は言いました。子どもたちに小銭を渡して亀を譲ってもらうと、太郎は亀を波打ち際まで運び、そっと海へ逃がしてやりました。

それから数日経ったある朝、太郎が舟で漁に出ていると、舟のすぐ横に大きな亀が浮かび上がりました。「先日助けていただいたお礼に、竜宮城へご案内します」と亀は静かに語りかけました。

太郎は驚きながらも亀の背中に乗り、海の底へとぐんぐんもぐっていきました。やがて見えてきたのは、青く光るサンゴと真珠で飾られた、夢のように美しいお城でした。

お城の門の前では、これまで見たこともないほど美しい乙姫様が、たくさんの魚たちとともに太郎を出迎えてくれました。「よくお越しくださいました。亀を助けてくださったお礼に、しばらくこちらでおくつろぎください」と乙姫様は微笑みました。

太郎は竜宮城で夢のような日々を過ごしました。毎日豪華な料理がふるまわれ、タイやヒラメが楽しそうに踊り、季節ごとに違う美しい部屋が次々と姿を見せたのです。

数日が経ったころ、太郎はふと故郷の母のことを思い出し、急に心配でたまらなくなりました。「楽しい時間でしたが、そろそろ村へ帰らなければなりません」と乙姫様に伝えると、彼女は寂しそうな表情を浮かべました。

「分かりました。それでは、こちらをお持ちください。ただし、決して開けてはいけませんよ」と乙姫様は言い、美しい玉手箱を太郎に手渡しました。亀は再び太郎を背に乗せ、ゆっくりと海面まで送り届けてくれました。

しかし、太郎が浜辺に降り立ってみると、村の景色はすっかり変わっていました。自分の家があった場所には知らない家が建ち、すれ違う人々の服装も話し方も、まったく見覚えのないものばかりだったのです。

たまたま通りかかった老人に尋ねてみると、「浦島太郎というのは、三百年以上も前に海で行方知れずになった人の名ですよ」と教えられました。竜宮城で過ごしたほんの数日の間に、陸では何百年もの時が流れていたわけです。

あまりの寂しさと混乱に、太郎はつい乙姫様との約束を忘れ、玉手箱をそっと開けてしまいました。中から白い煙がふわりと立ちのぼり、その煙を浴びた太郎は、あっという間に真っ白な髪のおじいさんになってしまったのです。

— 完 —